編み物大好き人間としては、家蚕や野蚕の手編み糸の少なさが残念ですが、『絹大好き』のご縁でタサールサンやクリキュラ、アタカスの糸などを手に入れることが出来ました。このアースカラーの糸から何が編めるのか、ワクワクします。
*写真の手編み糸/アトリエ トレビ
㈱ジョグジャカルタロイヤルシルク
http://jog-ja.center-f.jp/gaiyo.php
下村ねん糸
http://y-shamoto.sakura.ne.jp/simo/s_index.htm
軽い軽いセーター
2013年冬、日常着としての絹に再び出会った記念すべき年の瀬に完成したセーター。
タサールサンのブークレ糸は、もう作って下さる方がいらっしゃらなくなったそうです。最後の糸を分けて頂いて、何にしようかと迷いました・・・。
体調の悪い時は、アンゴラモヘアのようなふんわり軽い糸で身体を包みたいけれど、
アンゴラは長毛種のペットを抱いた時のように離れ毛が厄介。他のウールよりは楽だけど、やっぱりちくちくします。
シルクなら絶対安全。それで、ブークレの2本取りに撚糸を1本添えた3本取りでベースを編み、アタカスやクリキュラの糸でボーダーを入れてみました。非常に薄く軽い編み地です。たっぷり大判ですが、200gの総重量です。絹の糸は高価ですが軽いので、この重量で編めるのならば、ウールの手編み糸1着分と変わりません。
ウールのように、着てすぐ暖かいわけではありませんが、夜着1枚の上に重ねただけで夜食も作れるので、驚きました。
着る物で肩がこるとは思ってきませんでしたが、「ウールは重くて肩がこる」と言い、羽二重に真綿を挟んだ羽織下を祖父のために作っていた祖母を思い出しました。昭和三〇年代の初め頃、家庭用の編み機が普及して、毛糸で編んだきれいな配色の羽織下やちゃんちゃんこを叔母が作っていたので・・・「???」と思っていました。
しかし、持病を持って仕事を持つ前期高齢者としては、今更ながら絹の恩恵を感じます。寒い冬にも水垢離をしていたであろう神職の祖父には、絹は命を繋ぐ衣類であったのでしょう。私は寒がりで、タートルネックが好きなのですが体温を測る時には不便なので、ブークレ糸を3本取りにして撚糸を添えた4本取りで襟を付けてみました。大正解、後首がとても暖かです。
ウールより潰れる
編集データの作成時に、ハイバックチェアに寄りかかって画面を見つめていることが多いので、ウールのセーターでも背面がペタンコになります。蒸気アイロンで蒸すと戻りますがペタンコの絹のブークレ糸は、オーガンジーのよう。
もう少し生地感に厚みが欲しいと思って綿糸を交ぜることを考え、ハックの松本社長に相談しましたら、「いいアイデアだと思う」とおっしゃったので、引き揃える糸を探しました。
2014年10月の終わり、東京スピニングパーティーで「工房風花」の板野さんとお会いして綿糸を分けて頂きました。桜で染めたベージュの撚糸と白のネップヤーン、さて、どのような風合いになるでしょう。
みっちりしっかり編んで・・・、ラクダのシャツにならないように白を効かせ、かぎ針編みの花を散らしました。
実は、7年ぶりにおなか周りがすっきりしてきたので、ついつい浮かれてウエストほっそりにしたけれど、未だこのサイズは無理。友人に糸との交換で差し上げました。
お父様の介護をされておられるので、絹がお身体の疲れを取ってくれたらいいなあと思っています。
自分のサイズで
サイズはメンズのLくらい、しっかりおしりを隠す丈です。
ウエストを僅かにシェープさせ、バスト分は引き返し編みにして寸胴にならないように、体型に優しく沿うように編みました。
ニットは、このような編み加減が気軽に出来るので好きです。
綿ニットを着たり、編む方はご存じなことですが、襟ぐりや手首のゴム編みが伸びます。絹はもっとだれます。絹ニットは、これを嫌ってスパン糸を編み込んだりすることがあって、その表示をすると数パーセントなのに、数字を読まずに「絹100%ではないんだ・・・ 」と、言われてしまうことがあるそうです。
このセーターの襟ぐりと手首には、タサールサンの繭の、柄のように硬い部分から作った糸を添えて編みました。固めの糸なので、しっかり編めてだれませんでした。
ボーダーに、クリキュラとアタカスを添えて色を変えたので、肩回りが軽いけれど厚地になりました。肩をしっかり編むと型崩れしないし暖かいのです。綿糸が入った分重くなって、総重量400gになりましたが、気軽な普段着です。
人間は、嫌だなあと思うことが緩和されると、元に戻れなくなるところがあります。
シルクニットを着始めたら、長く着てきたウールが全く着られなくなりました。大急ぎでもう1枚編むことにして、糸を分けてもらいました。100g単位の価格を聞くと、「エッ!」と思いますが、シルクは軽いのです。このくらいざっくり感のある厚地のセーターを編むために、ウールの糸を揃えるならば、各色少しずつ多めに揃えると1kg近くは必要ですから、絹は厚ぼったく編んでも3分の1以下のg数で編めます。
編み物の好きな方、安心してチャレンジして下さい。編み心地ちが良く、気持ちの良い肌触りのセーターが編めます。もちろん夏冬兼用、素肌に着られます。これがウールと違うところです。日本は蒸し暑く、クーラーで冷やされた室内は寒い、綿で汗をかくと水分でひやりとする。だからと言って、化石燃料のさわやか肌着を皮膚が受け付けない私は、吸水して放散させて蒸れない機能のある絹に助けられ、昨夏は肌を健康に維持できました。
好きなボーダー柄で
綿のカジュアルだとミッソーニが好きな時代がありました。気軽なショップが撤退して購入する機会に恵まれません。毛がちくちくするようになったと言いましたら、昨秋の日本野蚕学会の帰途お訪ねした北軽井沢からフェミニンなニット製品を発信している「アトリエマリコ」のまりこさんから、レースのお花の付いた綿混の厚手のカーディガンを頂きました。ロングトルソーのLLで550g、綿100%よりは軽いです。
サクサンの白糸を見つけたので、もう一度絹100%で編んで着心地やだれ加減を比べることにしました。カジュアルなシルクニットの着心地の良いセーターが欲しいのです。
2本取りで編み地はメリヤスと縄編み、アタカスや、クリキュラ、タッサーの柄などの重い糸を配色糸にしたので、このセーターの総重量は300g。
これらを着て年末頃には、また次を編みましょう。
2014年に、実は変わった編み物をしていたのをうっかり忘れていました。
アトリエ トレビさんのデザイナー、長谷川千代さんが一昨年の年の瀬、絹羽二重の羽裏を裂いて作品を編んでおられたのに影響されて、私も裂き布ニットを編みたくなりました。
琉球藍で染めたエリサンの布を、1cm幅に裂いて編み始めました。羽裏一着分で、丈の短いベストが1枚編めるくらいと伺ったので、5mくらいは裂くのかなあと思いましたが、裂いても裂いてもまだ足りなくて、結局、10m使いました。
手は藍色に染まってしまうし布は重い、まるで鎖帷子のようだと思いましたが早速着用し、4月17日に開催された「シルク・サミット2014 in 富岡製糸場」に出席しました。 今日計ってみたら、1050g五分袖で肩で着る形。 ずしりと重たいわけです。
エリサンの裂き布で編んだセーター
ずしりと重たいけれど冬は暖かく、夏の冷房よけにも重宝しました。
次は、もう少し薄い布で編んでみようと思っています。
裂き布は端処理はしにくいので、ガーター編みで端を編んで、僅かに色が異なる2種類の布をボーダーにして、一目ゴム編みを淡々とくり返して編みました。
これはエリサン、薄手ジーンズのような布ですから、ぎっちりと重くなりましたが、羽二重なら軽く作れるでしょう。着物をほどいて、表地では何か作って裏地を編んでみましょう。
着物という衣類は素晴らしい構造美を持ち、日々美しく着用できる世界に誇るデザインです。リサイクルして数十年着用するために、布端の耳を残したまま仕立ててありますから、裂き布にするにはこの耳の手前5mmを切り残して、長い長い紐状にします。
先日トレビさんで、サクサンの細い紡ぎ糸を分けて頂きましたから、羽二重と引き揃えて編むと、しっかりした編み地になるかもしれません。
新しい楽しみが出来ました。その内何か編んで発信します。お楽しみに!
布/アトリエ トレビ http://www.akasaka-trevi.jp/